キャストインタビュー 小松森太郎・六川渉|キャンパスアクター

左:小松森太郎(こまつ・しんたろう)大学在学中から本格的に演劇の道を志し、キャンパスアクターにも参加。学びの経験は演劇にも生かされている。

右:六川渉(ろくかわ・わたる)大学にて演劇を学び、紆余曲折の後キャンパスアクターへ。人生経験を生かして多様に演じ分ける。

― まず簡単に自己紹介をお願いします。

小松小松森太郎といいます、もりたろうと書いてしんたろうと読みます。みんなからはしんちゃんって呼ばれてるので、覚えてもらえたら嬉しいです。フューチャーライブは始めて二年になりますが、実は去年まで大学生で、頻繁に公演に参加するようになったのは今年からです。

六川六川渉(ろくかわわたる)です。ろっくんって呼ばれてます。若くはないのですが、フューチャーライブを始めたのは半年前で、歳や演劇経験はしんちゃんよりもずっと先輩かもしれませんが、フューチャーライブではかなりの若手です。よろしくお願いします。

大学は学びの宝庫!

― 二人は大卒ですが、大学に進学してよかった点と、他の進路のうらやましい点を教えてください。

小松僕の進学した大学の一番のいいところは、授業数とサークル数がおそらくどの大学よりも多い、というところでした。つまり、自分から求めれば何でも学べたのです。僕は第一希望の学部の他に、舞台芸術を副専攻という形で学びました。このチャレンジによって、大学四年間の中で二つのものについて習得することができたことは、他の学校ではできなかったのではと思っています。なんでもかんでも学べた、探せば学びたいことが学べる環境だった、ってことが、この進路を選んでよかったと思うところですね。仮に他の道を考えるとするなら、専門学校もよかったかもしれません。専門学校であれば二年間、やりたいことだけのために毎日過ごせていたのかもしれないですからね。

六川僕の通ってた大学は、東京都民だと学費が少し安くなるという制度があります。実は、第一志望の大学には受からなかったのですが、そのおかげで学費を少し安く抑えることができて、親への負担も少なくできてよかったなという思いはひとつあります。やっぱりこうして自分でお金を稼いで生活してみると、学費の何百万ってお金を稼ぐのがいかに大変かってのがわかるので、他の私立大学よりはよかったのかなと思っていますね。

僕は文系に進んで、演劇ばかりをしていたのですけど、大学というところは、自分がしっかり目的を持って生活しないと、特に得られるものがありません。ただ行って卒業するだけになってしまう。その点、専門学校は選んだ道に向けてしっかり進めるように指導してもらったり、資格が取れたりするのはいいなって思いますね。あとは、高校が進学校だったので、大学に進む人しかいなくて、僕も大学という選択肢しか考えていなかったのですが、今考えれば、学校の進学率がどうかとかそんなのに関係なく、自分のやりたいことに直結した専門学校を選ぶって道もあったはずだよな、と思う部分はあります。もちろん逆にパターンもあると思うので、卒業後の進路がほとんど就職の学校でも「みんなが就職だから就職」ではなく、やりたいことがあって、大学なり専門学校なりに行った方が叶えやすいのであれば、まわりに流されず、自分の行きたい道を選んで欲しいと思います。

社会貢献のできる仕事だけど、もちろん辛いことも!

― フューチャーライブをやっていて「よかった」もしくは「つらかった」エピソードはありますか?

六川良かったことは、この活動そのものですかね。僕は芝居歴は10年以上になるし、自分の劇団での活動等もしているんですけど、社会貢献ができているかというとそうでもない。そういう活動ができているという点がよかったかなと。テレビとか一般的な芸能の仕事でも、1ステージで多くて何百人とかに見てもらって、面白かったで終わりだけど、FLの場合は年間で1万人くらいに、メッセージ性の強いものを見てもらうことができて、しかもその後の人生に良い影響を与えられるかもしれない、これは本当に凄いことだと思うんです。

小松六川さんがよかったことを言ってくれたので、僕はつらかったことをいいましょうかね。僕も具体的なエピソードではないのですが、例えばこちらで用意してある音響機材、主に無線のピンマイクなのですが、それと学校のワイヤレスマイクの周波数の関係で当日急遽マイクが使えなくなったり、早着替えをしなくてはいけないのに着替えをできる場所が遠かったり、夏の体育館で学ラン着なきゃでものすごく暑かったり、本来演劇をやるための場所ではないところでやるからこそおこる問題が起きた時は、なかなかつらいと感じることもあります。まぁ、そこはこの仕事ではどうしようもないところだと思うので、つらくても臨機応変なんとか乗り切るしかないんですけどね。

「働く」ということをよく考えてみてほしい

― フューチャーライブの演目で、好きなセリフや印象に残っているセリフはありますか?

六川演目12「社会ってどんな感じですか?~働く目的・生きる意味~」の、おじさん役のセリフで・・・いや、僕はおじさん側の役まだやったことないんですけど(笑)「年をとったら、誰もが気付くんだよ、『なにをやりたいか』『どんな仕事をしたいか』よりも、『何のために働くのか』『誰のために仕事をするのか』っていう『自分を支えるもの』の方が大切だってね」ってセリフがあるんです。これは社会で働いている人だったらわかると思うのですが、高校生にはまだ理解し難いセリフかなとも思います。ただ、本当に大事なことだと思うんですよこれって。

小松僕の中で印象に残っているセリフは、演目14「社会のフリーター評価、本当に知っていますか?」の、面接官のセリフ。「私が言いたいのは『時間のけじめ』ではなく『気持ちのけじめ』という問題なんですよ。」というセリフです。ちゃんと働けている人と、そうでない人の考え方の差として、この部分は確かに大きいなと思って。大人でも社会人でも、これがわかっていない人って結構いると思うんです。もちろん時間のけじめも大事ですし、どんな大事な仕事をしていても遅刻をする人はいますが、そういう人は信頼を失って、仕事を任せてもらえなくなっていってしまいます。でもこれはやっぱり、お金をもらって働いているのだから、とか、信頼されて任されているのだから、という、気持ちのけじめがあるかどうかで変わってくると思うんです。去年まで学生だった自分にも深く突き刺さることでした。

続けていたから、自分の演技が見えてきた

― フューチャーライブのやり始めと今で、何か自分の中で変わったことはありますか?

小松僕はやり始めて2年が経ちますが、演劇でお金が稼げる、ちゃんと仕事として演劇ができる、というところにすごく魅力を感じて始めました。お金を貰って演劇をする、ということはテレビの仕事以外ではほとんど無いことですからね。普通の演劇の場合は、ある程度面白いストーリーやキャラクターの設定があって、演出家がイメージする指示に従って、それに合わせて自分が役を演じる、ある意味決められたことをやる、といった感じなのですが、フューチャーライブに関しては、ストーリーはなく、内容のほとんどが説明で、キャラクターも役に合わせるのではなく、役者に合わせて、つまり同じ役でも役者によって全然違うキャラクターになります。脚本の面白さに頼れない分、さらに言えば音響や照明やセットもないので、そういったものの力も頼れない分、役者の力や役者自身の魅力が問われるのです。そして、行く高校によっても雰囲気や反応が違いますし、その反応を見ながらやってかなきゃいけない。最初のうちはとにかくセリフを覚えて、演出家に考えてもらった自分の演技に合わせたキャラクターをやる、ということだけで精一杯でした。けど今は、その場の雰囲気に合わせた間の取り方や空気の作り方も少しわかってきて、もちろんまだまだうまく空気作れなかったと反省することもありますけど、そういうところまで考えてやれるようになってきた。そういう点で最初の頃とは変わったかなぁ、と思っています。相手やその場に合わせて変えなくてはいけないというのは、結局演劇以外にも通じる話ではないかなと思います。

六川僕はまだフューチャーライブに関わってからは半年なのですが、最初の方はセリフ覚えにいっぱいいっぱいだったなというのはあります。けど、それがなくなってからはだいぶ慣れてきまして、特に数多くの現場を希望して経験させていただきましたし、高校生にちゃんと伝えるという意識は最初から変わってないと思います。強いて言うのであれば、最近は演技以外にも、例えば時間を見て、開始が遅れた場合とかでもちゃんと時間内に終わるようにテンポを調整したり、そういったことも少し気を配れるようになってきたかなと感じてはいます。

大学・専門学校は将来の選択肢を増やす場所 貪欲に学んでほしい

― フューチャーライブを通して以外で高校生に直接的に伝えたいことはありますか?

六川なぜ高校卒業してフリーターになるなとか、できれば大学に行って欲しいとか大人たちが言うかって話なんですけど、それは高卒就職とかフリーターになるよりも、大学に行った方が圧倒的に将来の選択肢が増えるからです。それをわかってない高校生が多いように思います。フリーターって、自由なイメージがあるかもしれないけど、実は選べる仕事も任される仕事も少なくて、大学に行った方が選べる仕事も任せてもらえる仕事も増えるわけだから、先のことを考えたら実は大学進学しておいた方が自由に生きられるんですよね。選択肢が少ないっていうのは選べる道が少ないってことなんですよ。だから、進学しておいた方が断然、選択肢が増えて、自由に選べる道が増えるってことなんです。それはわかっておいてもらいたいですね。あとひとつ、今の友達を大事にして欲しいですね。学校という場を出てしまうと、なかなか純粋に友達と呼べる存在を作るのって難しいんですね。仕事とか人生で困った時に味方でいてくれるのが友達だと思うし、本当に大事にして欲しいと思います。

小松 いっぱい与えられているということに気付いて、勉強できるものがそこらじゅうに転がっているんだということに気付いて欲しいですね。時間割の中で授業を受けて、部活やってる人は部活をして、と基本的にはそんな生活だと思うのですが、それ以外にも自分からもっと積極的になにかを得て欲しいんです。教えてくれる先生がいるという環境は素晴らしいんです。仕事になると必ずしも教えてくれる人がいるとも限りませんし、そんな時間もないかもしれない、でも高校には教えてくれる先生がいる。勉強のことでも進路のことでも色々なことが聞けるはずなのに、そういうことをしている人はあんまりいないんじゃないかなって。せっかくそういう環境があるわけだし、それに学費だってかかっているわけじゃないですか、だからもったいないなって思うんです。

高校生のうちから進路について考えて、興味のあることには恐れず飛び込むこと!

― 今高校生に戻れたらこんなことをしておきたかったなということがあれば。

六川 理系の勉強をちゃんとして理系に進みたかったなと思ってます。僕は建築関係の仕事に就きたいなと、大学に入って就職活動を始めた時にそれに気付きました。やっぱり早めに自分のやりたい仕事について考えておくことは重要なんだなと、今強く思います。建築士は専門の学部とかにいかないとダメなんです。僕は大学を出て、一度、広告代理店に就職しましたが、辞めることとなってしまい、半年前にこの仕事に出会うまではフリーターとして過ごしていました。たまたまこの仕事に出会えていなかったら今もフリーターとしての生活だったかもしれません。これがもし最初から建築士として就職できていたら、辞めることなく続けていたかもしれませんし、最初から演劇の道に進んでいればもっと早く仕事にできていたかもしれませんよね。ただ、一度就職したことにより、仕事に対しての意識というものは身に付きましたので、その点では就職してよかったと思っています。高校生は電車で見かける疲れたサラリーマンっぽい人とか見て、嫌だなと思うかもしれませんが、ああいう人こそ仕事に責任感を持ってやっている人だと思うんです。だから、もし親がそんな感じだとしたらむしろ尊敬してあげて欲しいですね。

小松 高校生の時、部活にノリで誘われて、ノリでラグビーを始めたんですけど、そのせいもあってか、怪我をしてしまい辞めることになってしまったんです。で、どうしようかと思い、演劇に興味があったので演劇部に入ったんです。だから怪我をして辞めていなかったら今の道には進んでなかったと思うんです。ノリで入った部活のせいで!だから、やっぱりちゃんとやりたいことをやるっていうのは大事だなと。それで、高校生にもし戻ったらなんですけど、ダンス部とか軽音部にも足を踏み入れたいです。掛け持ちはおそらく可能だったんですけど、なんかダンス部とか軽音部の雰囲気に踏み込む勇気がなくて、足を踏み入れず仕舞いになってしまった。特に今はミュージカル役者になりたくて歌やダンスも会得している最中なので、そこで勇気をだして踏み入れていたら、またなにか違っていたのかなって。勇気を出せばできることであるならば、そこでやらないときっと後悔するので、高校生の皆さんも、勇気の一歩、足を踏み出して欲しいですね。あとは、逆に、そんなにやりたいことでなくても続けていれば力になるという話もあるんですよ。僕は書道をずっとやっていたのですが、続けていた理由は、辞めるタイミングがなかったから、なんですね。それでも、なんと書道師範代になれました。なので、続ける、ということの大切さも、知ってもらえたらなと思います。